この記事を書いている2021年9月3日の時点で、未だに厚労省は、正式に空気感染という言葉は使用していません。WHOが認めた2020年7月6日(木)から既に1年以上が経過しているというにも関わらず。WHOは、この時すでにコロナウイルスが室内の空気中に残り、人々に感染する可能性があると認めています。それより前に、WHOへの公開書簡の中で、32か国の239人の科学者が、より小さな粒子が人々に感染する可能性があることを示す証拠を概説し、当局にその勧告を改訂するよう求めていました。
仮にこの事が仮説であったとしても、多くの専門家は、WHOは「予防原則」と呼ばれるものと「ニーズと価値観」と呼ばれるものを受け入れるべきだと述べました。これは、明確な証拠がなくても、当局はウイルスの最悪の事態を想定し、常識を適用し、最善の保護を推奨するという考えです。しかし、多くの科学者達が証拠を提示してこの事を述べているのですからなおさらです。
日本の厚労省も、新型コロナウイルス、取分けデルタ株に関してはより強い形での空気感染が発生するとのコメントを正式に発表していれば、多くの国民にとってもやるべき感染対策と対策の心構えも変容してくることは間違いないといえますし、感染数及びそれに伴う重症者数、死者数なども抑え込まれた可能性が高いといえると思います。
また、NIHの行なった別の実験では、主な感染である空気感染した場合には、SARS-CoV-2を肺の奥深くに直接沈着させ、肺損傷がより深刻である事が分っています。
また、CDCも、感染源から6フィート以上離れた空気中のウイルスの吸入によるSARS-CoV-2の感染が発生する可能性がありますとの見解を述べています。
ランセットは、「SARS-CoV-2の空中伝播を支持する10の科学的理由」との見解を述べています。「証拠の10の流れは、SARS-CoV-2が主に空中経路によって伝達されるという仮説をまとめて支持します。」とも述べています。
1.超拡散イベントは実質的なSARS-CoV-2感染の原因となります。合唱団のコンサート、クルーズ船、食肉処理場、介護施設、矯正施設などのイベントでの発生率が高いことは、エアロゾル伝播の優位性を強く示唆していると述べています。
2.隣接する部屋にいるがお互いの前にいることのない人々の間でのSARS-CoV-2の長距離伝播は、検疫ホテルで記録されていると記述しています。歴史的な見地からも、コミュニティ感染が完全にない場合にのみ、長距離感染を証明することが可能であるとの見解と合致します。
- 咳やくしゃみをしていない人からのSARS-CoV-2の無症候性または発症前の感染は、全世界の感染の少なくとも3分の1、おそらく最大59%を占める可能性が高く、SARS-CoV2-の重要な感染方法と書かれています。直接測定すると、話しをすると数千のエアロゾル粒子と少数の大きな液滴が生成されることが示されています。結論として、空中ルートを支持すると書かれています。
- SARS-CoV-2の感染率は屋外よりも屋内で高い10 屋内換気によって大幅に削減されます。
どちらの観測も、主に空中伝播経路を支持しています。
- 院内感染は医療機関で文書化されており、エアロゾル曝露ではなく液滴から保護するように設計された、厳密な接触と液滴の予防措置および個人用保護具(PPE)の使用がありますとなっています。
- 実行可能なSARS-CoV-2が空中で検出されました。実験室での実験では、SARS-CoV-2は空気中で最大3時間感染性を維持し、半減期は1・1時間でした。12 実行可能なSARS-CoV-2
は、エアロゾルを生成するヘルスケア手順がない状態でCOVID-19患者が占めていた部屋の空気サンプルで特定されましたとの記述がされています。
- SARS-CoV-2は、COVID-19患者のいる病院のエアフィルターと建物のダクトで確認されています。そのような場所にはエアロゾルによってしか到達することができないといえるでしょう。
- エアダクトを介して別々にケージに入れられた非感染動物に接続された感染したケージに入れられた動物に関する研究は、エアロゾルによってのみ適切に説明できるSARS-CoV-2の伝播を示しました。SARS-CoVおよびSARS-CoV-2は、フェレット間を1メートル以上離れた場所で空中を伝染する事が実験により実証されました。
- 私たちの知る限り、空中SARS-CoV-2感染の仮説に反論する強力なまたは一貫した証拠を提供した研究はありませんと述べています。
感染者と空気を共有することでSARS-CoV-2感染を回避した人もいますが、この状況は、感染者間のウイルス排出量の数桁の変動や環境の違いなどの要因の組み合わせによって説明できます。中でも換気条件は、重要な要素です。
個人および環境の変動は、少数の主要な症例(特に、換気の悪い屋内の混雑した環境で高レベルのウイルスを排出する個人)が二次感染の大部分を占めることを意味します。
これは、いくつかの国からの高品質のコンタクトトレーシングデータによってサポートされています。SARS-CoV-2の呼吸器ウイルス量の幅広い変動は、ウイルスのR 0(基本再生産数)
が低いため(約2・5と推定)、SARS-CoV-2を空中に浮遊させることはできないという議論に反しています。はしかの基本再生産が推定約15と考えられますが、より、平均である基本再生産は、少数の感染者だけが大量のウイルスを放出するという事実を考慮していないためです。R 0(基本再生産数)の過剰分散が重要なポイントです。
- 他の主要な感染経路、すなわち呼吸器飛沫または媒介生物を支持する証拠は限られています。
SARS-CoV-2の呼吸器飛沫感染の証拠として、互いに近接している人々の間の感染のしやすさ
が挙げられています。ただし、ほとんどの場合、空気を共有する場合の少数の遠隔感染に伴
う近接感染は、感染者からの距離に伴う呼気エアロゾルの希釈によって説明される可能性が
高くなります。近接を介した感染が大きな呼吸器飛沫またはパラメータを意味するという欠陥
のある仮定は、結核およびはしかの空中伝播を否定するために歴史的に何十年も使用されてきました。
これは医学の教義となり、エアロゾルと飛沫の直接測定を無視して、呼吸活動で生成される圧倒的な数のエアロゾルや、エアロゾルと飛沫の間の粒子サイズの任意の境界(100μmの正しい境界ではなく)などの欠陥を明らかにしました。
呼吸器飛沫はエアロゾルよりも大きいため、より多くのウイルスが含まれていると主張されることがあります。しかし、病原体濃度が粒子サイズによって定量化されている疾患では、両方を測定したときに、小さいエアロゾルは液滴よりも高い病原体濃度を示したと書かれているのです。
【結論】我々は、全体的な証拠ベースの質と強さを見落として、空中伝播に
疑問を投げかけるいくつかの空気サンプルでSARS-CoV-2の直接的な証拠を評価しないこと
は科学的誤りであると主張します。
SARS-CoV-2は空中伝播によって広がるという一貫した強力な証拠があります。
他のルートも在り得ますが、空中感染ルートが支配的である可能性が高いと考えています。
公衆衛生コミュニティはそれに応じて、さらに遅れることなく行動する必要があります。
MITの研究者は、屋内でCovid-19にさらされるリスクは、空気が混ざっている部屋では6フィートであるのと同じくらい60フィートで大きくなる可能性があると述べています。つまり、換気の良くない屋内では、約18メートル離れていても感染リスクがあると言っているのです。つまり従来の約1.8メーターのソーシャルディスタンス(社会的距離)では意味がないともいえるのです。
既存の安全ガイドラインでは、時間、マスクの使用、換気率など、空中伝播のリスクを正確
に定量化するにはあまりにも多くの要素が省略されているとも述べています。
国内では、世界の先端科学者より発表の遅かった、WHO、CDCより更に一周回って一年以上遅れて、2021年8月27日「コロナは空気感染が主たる経路」と研究者らが対策提言をするという国際基準からの顕著な遅れ、それでもまだごく一部の自体をまともに捉えている学者らがやっと声を上げ始めたに過ぎない。
大手マスコミは連日のように新型コロナウイルスのニュースや情報を流しながら、この肝心な「空気感染が主たる感染経路」との情報をほとんどといっていい程積極的には報じていない。
誰かが止めているのか、それとも情報収集能力が我々市井の者より劣っているのか不明です。
このままで、一向に正しい情報が伝えられないことで、一番負の影響を被っているのが国民です。
最後に、日本政府、厚労省は、一日も早く新型コロナウイルスは空気感染によっての感染が主たる感染との予防原則に沿って、新型コロナ対策を進めるべきであるし、そのことをマスコミを通じて広く国民に呼びかける責任がある。厚労省のWebサイトにはWHO等のリンクが張られており、そこには感染ルートの見直し等が記述されているので知っていて実行していないことは明白である。今まだ、空気感染が主たる感染であるとの国民意識が希薄であるのは、正しい情報を周知しない政府はじめ厚労省の多大な無責任さであり、責任は重大であると言わざるをえません。
(参照記事)ネイチャー、ニューヨークタイムズ、国立衛生研究所(NIH)、CDC、ランセット
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00277-8
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html
https://www.thelancet.com/article/S0140-6736(21)00869-2/fulltext
https://www.asahi.com/articles/ASP8W6KSKP8WULBJ00H.html
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